つれづれ味わい日記

都内で働く3男児母の備忘録。暇さえあれば本読んでます。

今週の読書記録(181210)

「動画2.0 VISUAL STORYTELLING」明石ガクト(著)

今日から産休なのですが、業務で動画について考えることがあり読んでみました。今後間違いなく伸びていく分野、どうして伸びていくのか、どう伸びていきそうかがわかりやすく書かれています。

 

「東大現代文で思考力を鍛える」出口汪(著)

なんとなしなきっかけで借りた本。受験生のときも東大の問題に触れたことはほぼなかった(まして理系でしたので文系科目は特に)ですし、出口先生のことも知らなかったのですが出題文を面白く、わかりやすく読むことができました。とにかく出口先生の解説がわかりやすいです。難しく思われる本文箇所を噛み砕いて、誰でも理解できる粒感まで落とし込んで解説されています。東大って割と現代社会に物申す系というか、若者に問題提起するようなテーマを意図的に(と私には感じられました)選ぶんですね。受験や東大がテーマの方以外でも思考力を鍛える、に興味がある方であればどんな立場の人でも楽しめる、考えるきっかけになる本と思います。

 

スローフードな人生!イタリアの食卓から始まる」島村奈津(著)

辻信一先生がおすすめされていた本。「スローフード」をテーマに旅をした著者が、さまざまな人や文化に触れたときの旅行記。「スローフード」=「ファーストフード」の反対活動、不買とかそういう話にとどまりません。全体を通して伝わってきた大前提は、ここでいう「食」が「ただ食べること」ではなく「食生活(生活の中での食)」であること。

印象に残る話が多々あるのですが、忘れたくないことを二つ記録します。

 

・食の均一化について

筆者は「スローフード協会(日本にも支部があるとのこと)」に関わる方々のインタビューをメインに進めていたが、「スローフード協会」が力を入れていることの一つに「伝統料理の継承」が挙げられる。

世界的に食の均一化が進んでいることに対して協会も筆者自身も危機感を覚えていることは読んでいるとわかるし、確かにそうだと実感できることも多々。

「手に入れようとしても入らない食料不足から、栄養の足りないサンクト・ペテルブルグの子供たちと、経済的には豊かで飽食の時代と言われて久しいのに、ジャンクフードに慣れ切って味蕾が破壊されてしまった日本の若者たちと、どちらが悲惨なのかは誰にもわからない。」

読んでいて悲しくなってしまったこの一文。

どうしてこんなことになってしまったのか、イベントで出会ったアメリカ人ジャーナリストが語った4つの要因がすべてをカバーしていると思いました。

「工業生産化とダイエットとの密接な関係」

「第一素材と消費者との距離があまりに遠いこと」

「オピニオン・リーダーたちの墜落」

「安さ」

 

本来は痩せるため、美しくなるための食事じゃないはずなのに、そういった情報であふれることで「食べること」がいち手段にすぎないもの、に落ちている現状。

 

口にするものが何からできていて、どんな風に手を加えられて食卓にやって来たのか、想像しづらい今の環境。自分が本当は何を食べているのか見えづらいし、知りえないこともある。昔は母親やおばあちゃんが手間暇かけて調理する姿を見て、子は育っていったんでしょうが、今は働く女性が増え手料理以外の占める割合が増えていった。

見えないこと、知りえないこと、わからないことに疑問を持つ想像力や、まず知りたいなと思う好奇心の欠如が一番の大問題なんだろうと思うけれど、その根幹は私たち大人がそのようなことに目を向ける余裕が生活の中で残っていないこと(特に大黒柱の男性は仕事をするだけで精一杯、がほとんどじゃないでしょうか)、子どもたちに伝える術がないことなのかとも思います。ついつい安さに釣られてしまうけれど、そもそもなんでこんなに安いの?と気付くことがほとんどなかったり。。

また食べる側が素材や作り手のことを想像する、反対に提供する側が食べる人のことを思う、ことがもっともっとできれば、物理的な距離は埋められないとしても届けられる物の中身や届けられ方の形は変わってくると思いました。

 

 

・かたつむりの素顔

農学部出身なので、こういう話は好きでつい残したくなってしまいます。「スローフード協会」のシンボルであるかたつむり、日本では食べる習慣もなく「のんびり屋」「臆病な者」のイメージが強いでしょうか。あと子ども向けの絵本だと割と出てきますよね、見た目が特徴的だからかな。

そんなかたつむり、実は怖いものなしの無敵生物なんじゃないかと思う特徴がたくさん。

・両性具有、自由自在に雌雄に変身できどんな状況でも子孫を残すことができる。

・健康なかたつむりは病気のかたつむりを助ける習性がある。ごちそうが目の前にあったとき、病気のかたつむりを見捨てて自分だけ、という行動はしない。単なる友情というより「子孫を残すためには一人生き残る、ではなく二人とも生きていくことが重要」という素晴らしい本能が働くからだろうといわれている。

・敵を攻撃する武器は何も持っていない、あるのは何でも食べられる雑食機能のみ。

・独特の動き、遅さゆえ剃刃の歯の上を歩いても無傷、どこまでも行ける。

速いこと、強いこと、賢いこと、経済的に恵まれていること・・・例えばざっと挙げるとこんなことが良しとされがちな社会に生きていて、本当の「生きる力」とは別次元の物差しで測られるものなのでは?とかたつむりから考えさせられました。